結婚式2

朝から湘南新宿ラインに乗り込み池袋へと向かう。9時過ぎにはJRの改札を抜け、あっという間に東口に辿り着いた。随分久しぶりなのに身体が池袋の地理を覚えていて、すぐに第一目的地である富士そばに辿り着いた。東京には沢山あるのに首都圏にしかない富士そばはぼくにとってちょっとした東京の象徴で、出張でこっちに来たときにはほぼ毎回食べていた。意気揚々と入店したものの、財布には現金が殆ど入っていなかった。

結局SUICAの使える生そば玉川に入店しざるそばを頼んだ。お手頃価格なのに麺にしっかりコシがあってよく冷えていて、実は結構好きな店なんです。店を出てからは以前のバイト先だったり初めて煙草を吸った公園だったりを見て回った。昔働いていた古本屋はアニメの店へ、地下へ向かう階段の先にあったゲーマーズは移転していた(地下への階段は封鎖されていた)。初めて櫻庭と煙草を吸った公園は小綺麗になり、信じられないくらい高い豊島区庁舎がすぐ隣に建っていた。あまりに変わりすぎていて自分がどこに立っているか分からなくなったくらい、池袋は変わっていた。

やがてサンシャインで友人と合流し、彼の車で品川のマリオットへ向かう。ご祝儀を渡し、煙草を吸っていると徐々に友人たちが集まってきた。当時18歳だった予備校のメンバーが今ではもう28歳で、出会ってから10年経ってもあの頃と変わらず付き合えていることが不思議で、とにかく幸せだった。予備校を出てから10年間、それぞれの修羅場をくぐり抜けながら今日までこの社会を生き抜いてきて、ちゃんと自分の居場所を見つけていた。激務で死にそうになりながら転職し、更に激務な職場でゴリゴリ働いている人。博論と戦いつつなんとか結婚式に辿り着いた人、非常に安定した立場を捨てて新たな場所で挑戦しようとする人など、苦しみながらなんとか生きていてくれてよかった。

式場では6人が同じ卓に案内され、それぞれ思い思いに酒を飲んだり、食べられない皿を押し付けたりデザートを奪ったり、ケーキカットのときにはカメラを持って近くへ走ったりした。最後には酒の力も相まって半ば惚けたような様相になり、この世の全てに感謝しながら両人とご両親へ挨拶し、トイレへ走り、6人で煙草を吸った。ぼくは交友関係がだいぶ狭いので彼のような盛大な結婚式は開けないだろうけど、いざ参加してみると結婚式というのはそう悪いもんじゃないなと思わされた。

自分も結婚式を開いておけばよかったかなとも思いつつ、(中学時代のグループへ合流した一人を除いて)5人でFITに乗り込み池袋へと走った。池袋に到着し、その場の勢いでタイムズスパ・レスタへ向かった。スーツの男5人が脱衣所に並び、喫煙所を経由して全裸になり、好きな風呂に好きなだけ浸かっていた。個人的には始めてサウナと水風呂を往復し、全身の脱力となんともいえない多幸感を味わえたのがよかった。

再び車に乗り込み、東京タワーを右手に見つつ慶応大学の前を猛スピードで疾走し、品川駅近くにあるビルの駐車場へ滑り込んだ。諸事情あって新郎新婦の待つ店でぼくは別れたが、あのときのぼくが品川駅のホームで一番幸せな男だったことは間違いない。ごく自然に社宅に戻り、シャワーを浴びて写真を見返しているうちに意識を失った。お腹が空いたのでキオスクで買ったスニッカーズが未開封のまま枕元に落ちていた。

実に多幸感に溢れた一日だった。どうかぼくの知り合いには積極的に結婚式を開いていただいて、昨日のような一日をもっと経験させてほしいと思った。みんな幸せになろうね。

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