歩く

オクトーバーフェスのあと、深夜の海老名に友人と取り残されたことがあった。赤レンガ倉庫で意気投合した人と別れて急に静かになり、横浜の大学に通う彼と二人で夜通し歩いた。深夜の公園で突発オフ会を催して知らない人と盛り上がり、朝日の昇る頃に彼の家に転がり込んで爆睡した。

雨宿り中に偶然出会った隣の女子校へ通う幼馴染とめちゃくちゃ盛り上がり、ついに彼女と雨の中へ飛び出して走りまくった。水たまりが深くて靴がずぶ濡れになって、けれど9月の雨は生暖かくて全く嫌じゃなかった。互いの友人と合流してその場でバイバイと手を振ってから、もう10年くらい会っていない。

学校の先輩とイントロへ突入して粉々になり、高田馬場から江古田まで何時間もかけて歩いて、途中駿台の前で横になった。延々歩いたがそれ以上に延々と会話は続いた。江古田に着いてすぐになか卯でうどんを食べて、何故かネカフェで朝まで時間を潰した。

川崎から品川まで歩いた。線路沿いを歩いたのか、それともGoogleMapを使って歩いたのかは定かではない。途中でハンバーガーと金麦を買い、フラフラしながら歩いていると左側にタイヤの公園があった。そこで休憩して、登ったりぶら下がったりして遊んだ。品川までは確か3,4時間掛かった気がする。彼女と別れ、更にそこから池袋まで一人で歩いたが、案外人は歩けるのだなと感心した。

六本木、三田、麻布界隈を歩いた。夜中に友人を呼び出して無理矢理深夜の散歩に付き合ってもらった。ハイボールを一杯だけ飲み、綺羅びやかな六本木の街を当てもなく彷徨った。六本木ヒルズの足元で朝を迎えたが、芝公園のあたりで見た朝日がとても綺麗だった。

梅田スカイビルの下でホットワインを飲む。映画帰りにちょっと寄っていこうよ、と当時の彼女と事前に打ち合わせしてお気に入りのマグカップを持って梅田に集合した。クリスマスの時期だからかカップルばかりで辟易したものの、案外席は空いていて、ソーセージもワインも調達成功。メリーゴーランドを横目にあっという間に冷えていくホットワインを急いで流し込んだ。

三条大橋をカメラ片手に歩く。平安神宮まで写真を撮りながら歩き、平安神宮でスタバを楽しむ。賑わう人並みの向こうではよさこいがやっていて、桜の季節の京都は大盛りあがりだった。同期と男二人で急に虚しくなってきて、河原町経由で寮へ戻った。

苦楽園〜甲陽園を一人で歩く。高級住宅街と聞いて向かったが実際はただの坂の多い住宅街だった。来てしまったものは仕方なく、とにかく登れるところまで登った。限界線の近くからは川崎重工のあたりまで見通せて、あの芦屋の集合住宅も一望できた。西宮に住むのも悪くないな、と思った。

北浜を彼女と歩く。おしゃれな喫茶店ばかりで、どれも似た雰囲気だが、レトロという川沿いの喫茶店がちょうど開店した頃だったので入店する。二階へ続く階段は席待ちの女性ばかりだったが、案外早く座ることができて安堵のため息。汚い川を窓の外に望むことができ、運ばれてきた軽食はどれも美味いし見た目が良い。その後はガラス瓶の博物館?やフォークオールドブックストアに顔を出し、北浜から京阪で家に向かう。

尾道を一人で歩く。駅近くのゲストハウスに宿をとり、コヨーテでカレーを食べてから大好きな喫茶店へ向かう。一つ年上のオーナーが暖かく迎えてくれる。今夜はもう誰も来ませんから、と看板をCloseにひっくり返し、彼はチェロを弾き初め、それに合わせて電子ピアノを鳴らす。数十分に一度、貨物列車が通るので薄いガラスの扉がガタガタと揺れるが、お互い酒が入っているので全く気にならない。酒と煙草で良い雰囲気になり、やがて23時を過ぎてなんとなく静かになり、別れを告げて宿へと向かう。

岡山をキャリーケース片手に歩く。いつも泊まっている宿へ荷物を詰め込み、カメラ屋を冷やかしに路面電車に乗り込む。城下のあたりまでたった2駅だが、自分に言い訳をしながら必ず乗ってしまう。オーナーとライカ談義で盛り上がり、あっという間に閉店時間を迎える。その後はジョーダンというジャズバーへ向かうか、サウダーヂな夜へ行くか、そのまま宿へ戻って寝るかのいずれか。帰り道にはいつも何枚か写真を撮っていた。

新山口から小倉まで自腹で向かう。小倉のリトルアジアというやっすいゲストハウスの個室がお気に入りで、繁華街を抜けたあたりまで進む方向だけを見て歩く。ここで以前キャリーケースがぶっ壊れて、仕方なく駅前のアイムで購入した。確か壊れたキャリーケースは公園のホームレスに譲った気がする。近くのビッグバンドで酒を飲んだりピアノを弾いたりするが、部屋が快適なので結局すぐに部屋に戻ってしまう。

麻布界隈で仙台坂を探して歩いた。それはもう信じられないくらい暑い夏の日で、当時は大学の2年生か3年生で、金はないが時間はあるのでとにかく歩きまくっていた。昔好きだったサントリーサタデーウェイティングバーというラジオ番組に出てくる、アバンティーという店を探したが結局見つからなかった。東洋英和の前を通り、いくつかの大使館を通り過ぎた。坂の上の綱町三井倶楽部に惹かれたが、三井グループの社員以外は立入禁止と書かれていた。近くの人に聞いても非公開らしく、世の理不尽さを痛感した。

深夜の高田馬場を歩く。あれは大学1年生の5月、まだ正式にジャズ研に入っていない頃に幼馴染の男に誘われてイントロへ突入した。全然吹けずに、けれどドレッドヘアの黒人と音楽って最高!と抱き合い、最終的には自分の情けなさに涙が溢れた。強くなりてえ、と二人で雨の中泣きながら、そして道端に吐きながら理工の友人宅へ向かった。