雨の島

呉明益「雨の島」を読んだ。図書館で第二の「三体」を探すために現代中国文学コーナーのあたりで見つけた。いい色の表紙だったのとシンプルなタイトルが気に入った。読んでみると中国でなく台湾の作家だと。場所も登場人物もほぼ独立した短編が6作載っていて、夜寝る前に一篇ずつ読んでいた。

なにか問題が解決するわけでもなく、驚愕の事実が発覚するわけでもない。「三体」とはある種正反対の静謐な作品だが、これがなかなか心地良くてつい読み進めてしまう。自然科学系の専攻の人が読めば大いに気に入るんじゃないかと思う。

登場人物は少ないが物語の中で流れる時間は大きく(=10〜20年単位)、舞台となる土地は1つの山だったり村だったりと限定的だ。ただ物語前編を通して登場する単語というか事象があって、読み進めていくうちにその事象の正体や与えた影響について伺い知ることができる。頭が混乱してくるような展開もあり、その正体について考えているといつの間にか眠ってしまうこともあった。

人の薦める本を読むのもいいが、自分が出会った本を自分の責任で読むのはいいもんだ。書店で目に入ったのを全部買えるだけの金銭的余裕はなくとも、税金で賄われている図書館でならゴソッと借りられる。しかもタダで。そういうわけで図書館ってのは実に良いもんだからもっと活用してほしい。リクエストすれば好きな本を買ってもらえるのも良い。ぼくはこれで10冊くらい市の図書館に蔵書を増やしました。