20年来の友人Sについて

僕にはSという友人がいる。彼は僕が埼玉に越してきてから最初に話をした男で、小学校の体育館で体操座りをしている初対面の僕に「M君のケツにはホクロが3つあって、こいつを繋ぐと三角形になるんだ」と自慢気に語った男でもある。当時の僕でも(基本的には)3つの点を繋ぐと三角形になると知っていたので、こいつは頭の悪い奴だとその瞬間に確信したわけだが、あれから20年が経ち、振り返ってみると最も長く続いている友人になっているし、世間的には優秀とされる職に就いているわけだから人生というものは不思議だ。

彼との関係は話すと長くなるが、同じサッカーチームで一緒にベンチを温め、お互い別の男子校で有意義な高校生活を送り、僕は浪人して、そして彼はエスカレーターで大学に入学し、学生時代には同じくジャズピアノに取り組み、なんだかんだ(そのレベルに天と地の差はあるが)似た軌跡を辿っている、と言える。かもしれない。

宣言が明け、偶然にもお互い地方から埼玉に越してきたので、彼と約2年ぶりに再開して昼飯を食った(ごちそうさまでした!!)。互いの近況報告はほどほどに、健康の話や仕事の話などに花が咲いた。薄々感づいていたが彼はどうやら非常に優秀らしい。朝早く起きて漁船に乗って大きな魚を釣ったり、日々リングフィットに勤しんでいることを知って改めて尊敬の念を覚えた。お互い生まれも育ちも埼玉だが、第二の故郷と言ってもいいほど彼は前任地を愛しており、僕もまたかつての大阪生活を満喫していたのだと気づかされた。

昔からの友人が社会の一線で頑張っている姿を見ると、僕もまだまだ頑張らないとなと思う。何より幸いだったのが、以前(20歳のころ)からずっと話している定年後のジャズバー計画について改めて話し合い、実現に向けて詳細な打ち合わせができた点だ。結果として確保すべき予算が大幅に減って、それぞれ実家からピアノを持ってきて2台並べるという妙案を思いつき、肝心の立地についてもかなり詳細に検討できた。こういう話ができるのは本当に嬉しいし、本当に励みになる。ひょっとしたら本当に、20歳の頃に酔いながら語っていた目標に手が届くかもしれない。仕事、頑張ってみようと思う。