コリーヘンリー、日高屋、2枚のシャツ

数年ぶりにあんなデカい音で音楽を聴き、ドラムとベースの低音で身体がぶるぶると震え、あの凄まじい掛け合いを肌で感じ、美味い酒と諸々を味わい、さらには演者と直接話をして、キュートでヒップな演奏を全身で味わった。こんなデカい音出して大丈夫?と最初不安になったのは、ここ数年間ライブへ行けていなかったからだと思う。

コリーヘンリーの音楽を聞いていると、この楽器(オルガン)、このスタイル(ゴスペル?ジャズ?)こそが音楽の正解な気がしてくる。ただでさえ豊かな倍音のオルガンが鳴らす意味分からんくらいリッチな和音、破裂音?を使ったボコーダー、伸びの良い歌声。とにかく彼の演奏を生音で聞けて、彼と同じ空気を吸っている事実が嬉しかった。

唐突に誘ったのに秒で応じてくれた、それこそ10年ぶりくらいに会った友人と当日は六本木で待ち合わせし、俺たちの日高屋でラーメンを食べてからビルボードへ向かった(行きたかったラーメン屋がスープ切れだったので)。お互いひとしきり会場の雰囲気に飲まれたのち、ライブの迫力に気圧されて曲間にしか酒とおつまみを摂取できず、アンコールが終わってから慌てて会計を済ませるなど不慣れな点が目立ったが、それでも音楽が好きで、なおかつ自身のやるべきことに全力で打ち込む彼と会えたのは実に嬉しかった。

ライブが終わり、お互いシャツを買ってサインを貰い、僕は悩んだ挙げ句着るためのシャツをもう一枚買って会場を後にした。慣れないミッドタウンを雰囲気で歩き、大江戸線に揺られながら「音楽、頑張らなきゃなぁ」と彼と話をした。同じ人間なのにここまでの差があるのはおかしい、きっとやれるはずだという思いと、もう無理だという思いがせめぎあい、でも結局凡人の我々は淡々と練習して少しずつ上達して、何かしらの形で残さないとね、という結論に達した。ライブに行くと興奮するけれど、自身の至らなさに落ち込むことを久しぶりに思い出した。

今朝起きて、壁に吊るされた2枚のシャツを見て、ああ夢じゃなかったんだなと思った。音楽はいい。コリーヘンリーはやっぱりいい。彼のボーカルめちゃくちゃ好きだった。地上の楽器でオルガンが一番好きだ。ライブはちょっと高かったけど行けてよかった。ピアノは今日からちゃんと練習しようと思った。シャツはガシガシ着たいけどもう少し肉厚だったらよかった。けどちゃんと擦り切れるまで着ようと思う。ありがとう東京。ありがとうコリーヘンリー。