ドライブ・ヒズ・カー

三峯神社を訪ねたことでようやく埼玉県民になれた気がする。

長い間会っていなかった友人に誘われドライブへ行ってきた。僕が暇そうにしていたから誘ってくれたらしい。僕より忙しい彼にわざわざ我が家まで迎えに来て貰い、洗いたての真っ白な車に乗り込んだ。いい車は座ったときの感じがいいし、加速もなんだかスムーズだった。助手席では気まぐれにカメラで景色を撮ったり、何をするわけでもなく道端に咲く桜を見たりしていた。ここ10年間の出来事を互いに語り、両者ともに「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです」といった時間を過ごしていたようだ。

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車は埼玉を走る。店が混む前にご飯を食べたいね、秩父といえば蕎麦だねと話していると実に都合よく蕎麦屋が現れたので、評判を調べることなく入店し天ぷら蕎麦を頼む。麺がよく締まっていて出汁も美味い。彼は舞茸の天ぷらを見て喜んでいた。舞茸の天ぷらが好きらしい。関西では蕎麦はあまり食べられなくてうどんばかりなんだよ、蕎麦湯知らない人もいるんだよという話をした。やがて彼の運転する車はダムの上を通り、曲がりくねった道を抜けて車はどんどん上へ向かう。

霊験あらたかな三峰神社はよい天気だった。今風の、でもよく見れば昔ながらのお土産屋さんを抜けて坂道を登る。白い鳥居を抜け、さり気なく立っている石碑や交番跡を通り過ぎ、荘厳な感じの本殿へ向かう。由緒ありそうな鳥居や(150年前に建造されたらしい)灯籠を横目に本殿前の参拝列に並び、家内安全を祈願するなどした。結局健康が一番だよね、という彼の一言は重かった。

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本殿を後にしてお土産屋さんを物色し、我々はおみくじ付きの味噌団子を買った。味噌団子は美味かったし、運勢は大吉だったからよかった(お土産屋では木刀を見つけてテンションが上った)。じわじわと混んできたため三峯神社を脱出し、しばらく行った先の道の駅で「ちちぶ餅」を買った。これが全く予想していなかったほど美味かったので次行ったらたくさん買おうと心に決めた。ちちぶ餅をリュックサックへ詰め込み、そして彼の運転する車は高速を駆け抜けて速やかに我が家へたどり着いた。実に完成された一日だった。

人は移動すると達成感が得られるようだ。ずっと家に居るのも楽しいけれど、外に出て歩くなり車なりで移動すれば「なんかやったぞ」感があって良い。僕は普段国道に沿って走るだけだけど、もう少し視野を広げて山梨とか長野とか、あっちの方に日帰りで出かけるのも悪くない気がした。いざ泊まるとなると準備や宿を探す手間があるわけで、朝出て昼飯を食って、ロードサイドの店で夕飯を食ってスーパー銭湯で身体を清め、そのまま帰宅して寝るような一日も充実感があって楽しそうだ。家からそう遠くないところに高速乗り場があって、実際どこへ行くにも不便な場所ではないことを思い出した。次は富士山の見える場所にでも行こうかしら、などと風呂で考えていた。

しかし助手席は実に快適だったなぁ……