独身寮の部屋でお香を焚いていた。するとフロア全体にお香の香りが広がって、エレベーターを降りたところでいい匂いが漂うようになった。特段管理人から何も言われなかったので無限に焚き続けていたが、壁やカーペットに匂いが染み付いて、転居の際に家具が一つもないガランとした部屋がどことなくいい匂いだったのが面白かった。
埼玉に越してきてもやっぱりお香をぼちぼち焚いている。しかし冬は換気ができずめちゃくちゃに匂いが篭もる。匂いが篭もるのは好きじゃないので、夜でも朝でも窓を開けて定期的に換気をする羽目になる。当然とても寒く、頭から羽毛布団に包まって震えることになるが本人とてその程度の不自由は特段なんとも思っていないし、寧ろお香を焚けないことへのストレスのほうが大きい。
けれどある日スパッとお香を焚かなくなった。理由は全くわからない。
