上申書

この会社に来るまではパワーポイントなんて全然使わなかった、というのは語弊があって、確かに前職では一回も触れなかったとは言え、少なくとも学生時代に所属していたゼミでは毎週のようにパワポを使ってスライドを作っていたし、月に一回は公衆の面前で発表する機会が与えられていた。最近は5年ぶりにパワポに真剣に向き合って上申書を作っているが、いざ拘りだすと無限に時間が溶けていくことに気づくなど。語句の使い方、グラフの見せ方や配置など考えることはとにかく沢山あって、しかも承認する人によって好き嫌いがある。やや本質的ではないとは思いつつ、まずは上司を納得させるためにパワポに向かっている。

各地から最も正しいとされる数字を集め、論理に破綻がないように組み合わせては俯瞰して修正し、より良い理屈をタンスの奥から引っ張ってきては当てはめて、やはりこっちの理屈のほうが向いてそうだと思い直して当てはめて、という仕事をしている。折衝能力より寧ろ如何に矛盾なく理論を積み重ねられて、関係各所を納得させられるかという能力が求められているように思う。理屈さえ間違っていなければ結果がどうであれ許されるし、いくら勢いがあっても土台がガッチリしてないと門前払いされてしまう。同じ営業といっても色々な働き方がある。