お茶職人

冬のうれしさは熱いお茶を美味しく飲める点にある。まだ太陽が昇っていない冬の朝にベッドから抜け出した身体を優しく温めてくれるお茶、これさえあれば他には何もいらない。

前の晩に作っておいたほうじ茶を年季の入ったDURALEXのグラスに注ぎ、電子レンジに入れてスイッチを押す。小さな泡が浮かび、水蒸気が上がり始め、ぼこぼこと沸騰する数秒前に取り出したのが一番美味しい。タイミングを間違わないためにも、人は決して電子レンジの前から動いてはいけない。

そいつを持って電源を点けたばかりで全く暖かくないコタツに滑り込み、眼鏡を曇らせながら飲む朝の一杯は何物にも代えがたい。静かで薄暗くて、開け放した窓からゆっくりと外気が流れ込んでくる。背中は冷えるがこのお茶さえあれば大丈夫。