社宅生活はじめました

社宅生活が始まった。住み慣れた大阪から以前住んでいた埼玉へ引っ越し、田舎の社宅でゆったりした生活を追い求めていきたい。引っ越しの荷解きや整理整頓がようやく一段落し、和室で優雅に紅茶を飲みながらこうして文章を綴ることができるのはなんと幸せなことか。

引っ越しの当日、東京で新幹線を降りた途端に大阪より気温が低いことに気づく。慌てて古着のジャンパーを羽織り、キャリーケース片手にJR乗換改札へ急ぐ。新幹線の座席ではずっと鬼滅の刃を読んでいたため、車内で食べようとした柿の葉寿司には手を付けられず。彼はそのままホテルの冷蔵庫へ放り込まれ、最終的には翌日の夕方まで誰にも食べられることなく寂しく過ごすことになる。

5時間以上掛けて辿り着いたホテルにチェックインしたが、入居前にバルサンを炊くためにタクシーで10分かかる社宅へ向かった。恐る恐るドアを開けてみると、前回内見したときより遥かに綺麗になっていた。見たところ襖紙や壁紙は全て張り替えられ畳も新品が入っていた。心地よい畳の匂いを感じつついそいそとバルサンを各部屋に設置し、窒息しないよう順序立ててスイッチを入れた(家から出たときに部屋に忘れ物をしたことに気づき無事窒息したが、ホテル近くの牛丼屋で飯を食べて復活した)。

散々検討した結果、以前の家より遥かに広く新しい快適な空間が完成した。ディアウォールと有孔ボード、間接照明をふんだんに取り入れたリビングはあたかも尾道のブックカフェに居るような雰囲気を醸し出しているし、勉強のために充てがわれた部屋には電球を一本だけ吊るし、勉強以外のことに気が向かないよう禁欲的なレイアウトにした。キッチンのダサい蛍光灯は苦労して白熱電球に挿げ替え、ピアノは階下へ配慮した形で壁際にそっと設置した。今後どれくらい日本に住むかは分からないが、まずはこの社宅生活が豊かなものになることを心から祈っている。